Virage 整備記録

2013年10月8日

W126 300SE MT コンヴァージョン

W126 300SE MT化
何とも素敵な色のW126が到着しました。素晴らしいコンディションです。久々に見る300SEは何とも凛とした佇まいで静かにアイドリングしていました。W126 300SE MT化
日本でのいわゆる「Sクラス」は殆どがV8を搭載しているでしょう。V8モデルに比べると6気筒モデルはさぞ非力に感じるだろうと思われる方もいらっしゃいますでしょうが、キャラクターが違うものだとお考えください。当時のメルセデス・ベンツがただ小さい排気量の廉価版を造るわけがありません。ヨーロッパでのW126はディーゼルかこのM103直列6気筒のほうが多かったようです。私自身過去にW126 300SEとW140 300SE(M104)に乗っていましたが、不足を感じるどころか好印象しかありませんでした。軽量で軽快に回るエンジン、エンジンルームに余裕があるため廃熱効率がいいので消耗品の寿命が長いこと、燃費がいいことなどメリットも多いです。W126 300SE MT化
オーナー様は憧れていたW126を手に入れられて満足されていたものの、どうにもMT(マニュアル・トランスミッション)化の想いが捨て切れず、いくつかの関東の専門店にお問い合わせされたものの真剣に取り合っていただけなかったとのこと。W126のMTモデルはれっきとしたカタログモデルであり、イタリアなどではショーファー・ドリブンのモノでもMT車が多かったようです。下手が乗れば知りませんが、上手い人が乗れば全く変速したことさえ感じられないスムーズな運転ができるのはMTならではです。もちろんW126 300SE専用のマニュアルトランスがあり、それを使用します。W201やW124用とはギア比が全く違います。車重が違うので当たり前のことですが、専用品以外のトランスミッションを使った場合なんともチグハグでおかしな車になってしまいます。トランスミッションのギア比がその車のキャラクターづけに大きく影響するのはいうまでもありません。もちろん、ファイナル・ギアも専用のギア比のものに変更します。全て純正部品を使用してカタログモデルと同じように仕上げます。何か珍しいモノを造ろうとしているのではありません。ヨーロッパのスタンダードモデルに戻してやろうという作業です。当時ヨーロッパでのW126のスタンダードであったのがこのモデルであったならば、このモデルを中心に開発が進められたとも考えられます。彼の地ではV8モデルのほうが異端であったのかも知れません。W126 300SE MT化
この車ができた時に、これが日本に一台しかないW126のMT車になるのか、すでにあるのかそんなことは私にとってもオーナー様にとってもどうでもいいことです。MT化することにより、数十kg単位で車重が軽くなり、発熱が抑えられ、故障する箇所が減り、運転する楽しみが得られるのであれば何も言う事はありません。「W126はやっぱりATで乗るほうがいいでしょ」なんて言う方は、乗ったこともないのに何でそのように思うのでしょう?それはただの素人の憶測です。オーナー様も私も完成が楽しみな車です。