Virage 整備記録

2022年10月26日

K、KEジェトロニックについて

Ferrari 328 K-lambda unit

昨今非常に多くの依頼をいただくようになりましたが、

半分以上を占めるのが既に誰かがバラした、もしくは誰かが「O/H」したというものです。

そもそも「OverHaul」という言葉の意味を理解しているのかどうかも疑わしい「誰か」が作業をしているようです。

内部のダイアフラムやOリングを交換すればユニットの「overhaul」が完了していると思われているのでしょうか。

今や完全に時代に取り残されたK及びKEジェトロニックというシステムですが、それがそのシステム自体が緻密な仕掛けの機械だということを否定するものではありません。

かつてそのメーカーであるBOSCHは内部のO/Hキットを供給していました。

その供給を辞めた理由はそこら辺の手際の悪い雑なメカニックが精度を要求される緻密な機械をちゃんとバラして組み直せないために頻繁に起こる不具合が原因だったのではないかと推測されます。

またちゃんと組み直せたところで、システムは単体で機能しているわけではなく、それを構成する各ユニットを調整してシンクロさせる必要があります。

よってそれぞれの車種や、ユニットに適合するデータがなければ話にもならないということです。

興味本位でこれらのユニットをバラし、適当に組み立てたものがちゃんと機能したのであれば幸運に尽きます。あなたはギャンブルに強い方なのでしょう。

何故調整する、シンクロさせる幅があるのでしょうか。それは機械的な摩耗があったり、車種によって設定が違ったりするためです。

中のシール類を交換しただけでなくそれをベンチテストして調整し、更に実車にインストールしてそれに合わせて調整する必要があります。

今時K、KEジェトロニック搭載車に乗っているくせに、ケチって安い「O/H済」と謳われたものを選ぶ方が多くなったようです。

こういう状況を見て、敢えて当社ではK、KEに関することを全て値上げしました。

また、Kの場合(KとKEの違いさえ分かっていない方も多いですが)フューエルディストリビューターのみのO/Hだけ、もしくはウォームアップレギュレーターのみのO/Hは受け付けていません。

前述した通り、それら単体では機能しない上にそれらの相関性こそが重要だからです。

一般のユーザーの方々、懇意にしているショップの方がK、KEジェトロニックに精通しているなんて決して思わないでください。

殆どのメカニックは知ったかぶりしているだけです。

嘘だとおもわれるなら担当のメカニックに「燃圧はいくらありますか?」と訊いてみてください。「ある」「ない」ではなく数値を訊いてみてください。

その数値がちゃんと答えられないのであればそのメカニックは何も分かっていない上に経験値の無い「勘」に頼ってやっているだけです。

K、KEジェトロニックの点検する上で「燃圧」を測っていない、もしくは測り方が分からないということは丸腰で戦場に赴くことと何ら変わりません。