Virage 整備記録

2014年1月26日

BENTLEY 8

引越しでバタバタして無理が祟ったか、風邪をひいてしまいました。山ほどすることがあるのですが、少し休ませていただいています。ブログだけでもと思い、少し前に記録したものをご紹介します。ベントレー8 SUキャブ
ワークショップに置き去りにされていたBENTLEY 8ですが、移動させなければいけません。バッテリーを繋ぎ、6.75リッターのエンジンを起こそうと試みるものの、燃料ポンプが回るとフロアにボタボタと腐ったガソリンが垂れてきました。なんとこの車、片バンクに一つづつSUキャブが装着されています。サイズはともあれ、こんな排気量のエンジンにこんなキャブ2つで足りるのかと訝りましたが、取り敢えずそれを外します。ベントレー8 SUキャブ

ベントレー8 SUキャブ
完全な機械式の燃料供給装置であるキャブレターですが、当時のロールス、ベントレーらしさを実現するために様々な補助デヴァイスが装着されています。ソレノイドやアクチュエーターなどがところどころに見え隠れします。機械でこれをするということは非常に複雑な機構を意味します。この後K-Jetroに移行したことを考えると、今や複雑怪奇な機械とされているK-Jetroでもかなりシンプルなものに思えます。ベントレー8 SUキャブ

ベントレー8 SUキャブ
とは言うものの、キャブレター単体は単純なもの。まあ、どうせそんなことだろうと思っていましたが、この有様です。この車がどのくらいの期間寝たままで、どのくらい古い燃料が入っていたのか知りませんが、キャブレターの場合、残留する燃料の量が多いためこのような被害が出ます。腐ったガソリンは思いの外攻撃性が強く、アルミを深く浸食することがあります。古い自動車を長期保管する場合は燃料保存剤等をうまく活用するか、せめてチャンバー内のガソリンは抜いておくべきです。またK、KE装着車の場合、より深刻なダメージがある場合が多いです。数年寝ていたK、KE装着車を始動する場合は無理にスターターを回して被害を拡大する前にご相談くださいませ。ベントレー8 SUキャブ
本来ならば全て分解して超音波洗浄機で完全にクリーニングして組むところですが、取り敢えず動けるようにすることが目的なため、ちゃっちゃとクリーニングして元に戻します。ちゃっちゃとできるところがキャブレター(特にSU)のいいところではあります。午前4時頃に元に戻ったこれにフレッシュガソリンを注いであげたところ一発始動。ワークショップ裏に移動する数十メートルの間のドライブでしたが、久々に味わう当時のロールス、ベントレーはやはり他とは違う独特のものです。ブレーキや指先だけで操作するギア・セレクター等、今や絶対に味わうことのできない乙な感覚です。数年ぶりに動いたこの巨体に何とも言えないシンパシーを感じながらも、やれた内外装を見るとかわいそうに思えます。過去有名ペイントショップで施工されたという全塗装もところどころが剥がれ錆が浮いています。塗った直後はさぞかしキレイだったのでしょうが、今やこの姿。誰が塗ろうと関係なく、下地の処理が甘かったか、30年前の常識で塗られたか、それとも依頼者の懐具合なのか、何でもいいですが今やこの姿です。塗料の進化は目覚ましく、耐久性や防錆に関しては昔のものとは比較になりません。これから塗られていくものは、30年前の常識やノリではなく、しっかりとした現代の知識と技術を持った上でしっかりとした予算をかけて塗られていくことを期待せずにはいられません。