もうわざわざ投稿する必要も無いと思っていたのですが、近頃K、KEの投稿が無いため、もうサービスを辞めてしまったのかと訊かれました。選任のスタッフがほぼ毎日全国から送られてくるユニットのO/Hをしています。 それはそれは様々な車種の様々なコンディションのものがあります。工場出荷時からそのままのオリジナルのもの、米国やBOSCHでリビルトされたもの(ほぼイイカゲンな内容)、どっかのオッサンが見よう見真似で分解してデタラメに組まれたもの等々。 今回は8年間眠っていたR107のKジェトロです。



これ全部、腐ったガソリンのカスです。

8年間放置のわりにはマシです。もっと酷いものを多く見てきました。それも全てO/Hしました。

プランジャーはご覧の位置でスタックしてビクともしません。たまにこれをCRCを噴射してプライヤーでむりやり引っ張って、動くようになったと喜んでいるオッサンがいますが、これがスタックするに至った原因は腐った燃料です。内部に残ったカスは何にも影響しないとでも思えるのでしょうか?
>

続いてウォームアップ・レギュレーター。


プレッシャー・レギュレーター。

K、KEジェトロニックとは、システムの名称です。正にシステム全体のことであり「不調」であるならばシステム全体を診るべきです。システムのことをよく分かっていないメカニック(殆どそうですが)が「あれでもない、これでもないからフューエルデスビか?」なんてことを妄想するらしいですが、フューエル・デスビがだめならば、他もダメです。もしくは今は生きてるが明日死ぬかも知れませんということです。因みに、K、KEの場合、現状の燃圧を把握していないようなショップは何も分かっていません。「燃圧はどうやって測るのか?」なんてことをたまに訊かれることがありますが、二つ思うことがあります。
1.なんでそんなところに、そんな車が入庫しているのか。
2.なんでそんなことを1ペソの得にもならないのに教えないといけないのか。
ユーザー様の中には、古くからの付き合いだとか、輸入車の専門店だからだとか、近くに輸入車を診れるところがないからとか、軽トラからフェラーリまで診ているからだとかという理由でそのショップに依頼されるのでしょうが、それらはシステムを理解しているか否かに、これっぽっちも関係ありません。それを理解しているかどうかはそれをお勉強したうえで経験を積んだかどうかです。また、機械と呼ばれるものには全て基準値が存在し、それを評価する機器があるのです。フューエル・デスビやウォームアップ・レギュレーターを分解し、内部のシール類を交換して「ハイ、完成」ではないのです。ベンチテストして調整し、全てが基準値に収まってこそのO/Hです。システムの機械部分と燃圧でどれ位のチェックポイントがあるかなんて、知っている方にあったことがありません。
ユーザー様のご予算が限られているという場合もあるでしょう。が、予算が無いのに、古くてカッコいいけどお金が掛かる輸入車に乗るという行為そのものに無理があります。 例えば、これから家族に生死を分けるオペが必要だという時に「ちょっと今月苦しいんで、ココだけお願いしていいですか?」だとか、お医者様に「もうちょっと(オペ代を)負けてもらえないっすか?」なんて言いますか?
「思い入れがある」「亡くなった父の形見」なんてお話も聞きますが、自動車という「機械」に何の関係も無い話です。
今回ご依頼のオーナー様は永年憧れていたお車を手に入れられたようです。8年間も不動車だったため、最初から覚悟はされていたとのこと。こういうお客様に選ばれたお車は幸せだと思います。 自動車は「気持ち」や「思い入れ」で調子良くなりません。「予算」と「技術と知識」、そして「ツール」が必要です。
Update: / Date 2015-10-01